袴田事件のこと

 10日、「冤罪を考える集会」で、袴田事件のドラマを見ました。四人もの殺人を犯したという濡れ衣を着せられ、死刑判決を受けた袴田さんのことは、ごぞんじのかたも多いと思います。

 ドラマでは、三人の裁判官の多数決の結果、無罪と判断したにもかかわらず、死刑の判決文を書かねばならなかった若き裁判官の苦悩が浮きぼりにされていました。彼はその後裁判官を辞め、自力で調査し無罪である確信は更に深まり、自分がひとりの人間を殺すことになったことで苦しむのです。
 物的証拠はなくても、強制された自白だけで死刑になるーーこんなことがあるとは普通信じられませんが、あるのは事実てす。、私たちもいつこういう目にあうか分からないと思うと本当に恐ろしいですね。
 袴田さんは長い間拘禁状態に置かれたため、今は精神状態が普通ではありません。いつ自分が死刑になるかのと思いながら生きていればそうなるのは当然でしょう。かわいそうで言葉も出ません。それと共に袴田さんを陥れた警察や公正な裁判をしなかった裁判官らに対し、強い憤りを覚えます。

 苦悩した裁判官は、現在は76歳くらい(袴田さんも同年齢)です。少し前に裁判官としての守秘義務を破ってこれまでのことを告白し話題になりました。良心の方が勝ったということでしょうが、大きな勇気が要ったと思います。(袴田さんの苦しみと比較すべきではありませんが、民事も含めて、間違った判決を平気で出す、良心なんかどこかへ置き忘れてきたような裁判官が多いのですから、この方は希有は方だと私は思っています。)彼は、袴田さんの再審請求に尽力して活動しているそうです。

 何でこんなことが起きるのか。戦後はひとりひとりの人権が尊ばれる時代になったはずなのに、そうではなかった。司法界は何かが間違ったのでしょう。それが今でも尾を引いているような気がします。